元社員によるインサイダー取引事件が発覚した野村証券。社内の傍流からサプライズ人事でトップに抜擢された渡部賢一・野村ホールディングス社長(55、野村証券社長も兼務)にとっては4月1日の就任早々、大きな試練が訪れることになる。経営責任の取り方について「事実関係の確認を待って考えたい」と明言を避けた渡部氏だが、国際、営業、管理など社内の各派閥の均衡が崩れている野村では事件が内紛の火ダネとなり、トップ交代に発展する恐れもある。
「渡部社長は社内地盤がとても弱いだけに、インサイダー取引事件を契機に、投資銀行業務を行う部門と株式手数料などをコツコツと稼いでいる旧来の営業部門のさや当てが激化する可能性がある」
野村関係者は今後の社内情勢についてこう推測してみせた。
野村では、1997年5月に国際畑出身の氏家純一氏(62、現・野村ホールディングス会長)が社長に就任して以降、M&A(企業の合併・買収)やTOB(株式公開買い付け)といった投資銀行業務を重視してきた。その一方で割を食ったのは、株式売買手数料などを稼いでいる旧来の営業部門だ。
冷や飯を食わされている営業部門には、投資銀行部門への不満がうっ積。「営業マンがコツコツとノルマ漬けで積み上げた利益を、投資銀行業務こそが野村の将来戦略を担う部門だと偉そうにしている連中がサブプライム関連損失で吹き飛ばしてしまった。これは明らかに経営陣の判断ミス」(営業部門関係者)との声も漏れ伝わってくる。
証券業界のリーディングカンパニー、野村の信頼を大きく失墜させたインサイダー取引事件も投資銀行部門で起きた不祥事だ。営業部門にたまりにたまった不満がこの事件をきっかけに爆発、渡部社長の社内地盤が非常に弱いとされるだけにドロ沼の内紛に発展する可能性は否定できない。
4月1日に新体制がスタートした野村で、次期社長候補として渡部社長の名前が挙がったことは一度もなかった。
早くから本命視されていたのは、野村ホールディングス副社長だった戸田博史氏(56)と稲野和利氏(54)で、2人とも今回の人事で野村証券副会長におさまった。
戸田氏は債券営業で世界的に名前を知られ、ロンドン駐在時代には英経済誌の表紙を飾ったこともある人物。また、稲野氏はトップにズバズバと物を言うことで知られる豪傑で、リテール(個人取引)など幅広い分野を経験している。
「この2人はともに野村ホールディングス前社長の古賀信行氏(現・野村証券会長)にかわいがられていた人物。サブプライム関連の巨額損失でミソを付けた古賀氏が社内での権力を温存するため、ひとまず2人を社長レースから外したとみる向きが、野村社内には少なからずある」(営業部門関係者)
企画、財務畑が長く、社長レースではまったくの無名だった渡部社長はマーケットの秩序を守るべき証券会社を舞台に起きたインサイダー取引事件でいきなり試練に直面し、社内に目を向けると内紛勃発の懸念もうず巻いている。
しかも社長レースの本命2人が温存されているとなれば、渡部社長の首もとが寒くなる事態がいつ起きてもおかしくない。
平成に入ってからの野村は、大きな不祥事のたびにトップが交代した。
91年6月には、証券取引法(現・金融商品取引法)が禁じた損失補てんを野村などの大手証券が大口顧客に対して実施したことが大きな社会問題となり、当時の田淵義久社長が引責辞任に追い込まれた。さらに97年には、総会屋への利益供与事件により、田淵氏の後任の酒巻英雄社長(当時)が引責辞任するハメになった。
「3回目(の大不祥事)を起こせば、野村証券は社会的な信頼を二度と取り戻せない」-。酒巻氏の跡を継いで社長に就任した氏家氏が同年、幹部に訴えた言葉だ。
野村のみならず市場全体の信頼を大きく失墜させたインサイダー取引事件。社内基盤が非常に弱いとされる渡部社長のもと、この事件は野村にどんな事態をもたらすのだろうか。
ZAKZAK 2008/04/24
波及かぁ。ハキュー
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