県議会の共産、県民クラブ、社民の野党3会派が提出した高レベル放射性廃棄物の最終処分場の県内立地拒否を宣言する条例案は11日、質疑も討論もなく否決された。三村知事が「条例より重い」とする国との「確約」には「知事の了承なしに」との言葉が含まれ、あいまいさが残る。知事はこの日、福田首相にも確約を念押しする方針を表明したが、確約の内容が以前と変わる可能性は低い。(北沢拓也)
共産党の諏訪益一氏は提案理由の説明で「最終処分地の選定作業が遅れ、青森県がなし崩し的に最終処分地になるという県民不安が現実味を帯びてきた」と指摘した。
そのうえで「処分地にしないことは超党派の総意であり県民の総意。条例化は何も無理な提案ではない」と主張した。
しかし、賛成したのは条例案を提案した3会派の5人だけだった。
閉会後、県民クラブの鹿内博氏は「条例案の議論はされなかったが、提案したことで県民の関心は高まった。知事の了解なしにと書かれている確約の問題点も指摘できた」と評価した。
東通村議会が最終処分を含む核燃サイクルの勉強会を始めるなど、県内では処分場誘致ともとれる動きが出ている。
蝦名武副知事は11日の議会で「確約は後世の知事も拘束されるもの」などと発言。自民党会派の席から「余計なこと言うな」と声があがった。
■説明せぬ あいまい知事
《解説》政治の世界に「本音」と「建前」がある。それは仕方ない。だが高レベル放射性廃棄物の最終処分場をめぐる三村知事の言動は、あまりに露骨と言えないか。
処分場受け入れ拒否の宣言条例案は不要だ、とする知事の言い分はこうだ。「国の確約は重い。だから条例は必要ない」
だが、国は問題となっている「確約」で、青森県に対して「将来も絶対に処分場にしない」との言質を与えてはいない。
処分場選定についての法律は〈知事及び市町村長の意見を尊重しなければならない〉と規定する。知事が重視する〈知事の了承なくして、青森県を最終処分地にしない〉との確約は、この法律の範囲内にある。青森県だけが特別扱いされているわけではない。
94年と95年、確約をめぐって国と交渉した元県幹部は、将来にわたる担保ではないことを理解していたと、朝日新聞社の取材に証言している。三村知事が何度も経産相らを訪れて念押ししているのも、過去の確約のあいまいさを知っているからこそ、なのだろう。
念押しを繰り返すことで生まれる「重み」もあるかもしれない。ただそれは文書で明快に規定された「理」による重みではない。結局、知事は国の「人情」に期待している、と映る。
しかし、三村知事はこの現状を説明しようとしない。1月、記者会見で条例が不必要な理由を問われた知事は、「これまできちんと(確約を)確認してきた。そんなに私は信用されていないのかと、寂しい思いだ」と感情的に語った。
もし知事が「信用されていない」のなら、「確約」のあいまいさに知事が誠実に向き合っていないからではないか。
知事が説明していないことは、他にもある。
六ケ所再処理工場で生み出された高レベル廃棄物は、30年から50年にわたり、工場内に「一時貯蔵」される。なぜか。最終処分場に向けて運び出す前に、放射能や表面温度が下がるのを待つ必要があるからだ。一時貯蔵されている廃棄物の方が最終処分される廃棄物より、危険性は高いのだ。
一時貯蔵がすでに始まっているのに、なぜ最終処分場を拒むのか。
三村知事はそれも語ろうとしない。06年の記者会見では、過去の経緯にふれつつ「約束は約束」というだけだった。
三村知事は、国から新たな「確約」を得るという。だが、文書の内容が以前のものと大きく変わる見込みはないようだ。福田首相にも念押しするというが、それは新確約にも付きまとうあいまいさを、ごまかす方便と言えるだろう。
問題は再び、先送りされた。県民の不安が再燃する日が、いつかまた来るに違いない。(小宮山亮磨)
asahi.com
みんな同じ思いなんでしょうね。
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